追憶の桜 34
☆ちょっと体調を崩しました。・・・暑くなったり寒くなったりで、風邪を引いたのか、それとも相変わらずの頭痛なのか。早い更新をと思っていたのに、すみません。拍手コメントのお返事は、次回、書かせて頂きたいと思います☆
「『護』のモヂを解き、自らの居場所をわざわざ知らせてくれるとは……舐められたものだ」
右手に裏正を携え、鋭い視線を庭にいる侍達へと向けられた。
「殿、それは……」
重く息苦しく感じられ、誰もが口を開けずにいる中で、震えそうになる声を必死に抑えながら、流ノ介が丈瑠の言葉を否定しようとした時だった。
「それは違う。丈瑠…否、静瑠と言ったか……私は逃げるつもりも、闘うつもりもない。ただ…………謝りたいのだ」
そう、屋敷の奥から姿を現し、言葉を発したのは薫姫だった。
いつもなら、その言葉に噛みつくであろう丹波は、姫の横で正座をし、しっかりと丈瑠を見据えた。
「謝る…だと?……くだらない。欲しいのは言葉ではない。償いたいというのならば、その命で贖ってもらおう」
丈瑠は、苛ついた声を吐き出すと、手にしていた裏正の剣先を薫姫へと向けたのだった。
「……わかった」
薫姫は、一度も丈瑠から目を離さず、一呼吸置いた後、そう答えた。
「姫、それはなりません」
「そうですとも、そんなことは認められません。それに…もし、姫に手をかけたと殿が知れば…………」
薫姫の一言に、慌てて口を挟んだのは丹波と流ノ介だった。
「そうです。貴方にもしものことがあって、それが自分のした事だと、丈瑠が正気に戻って知ったら、絶対に自分を赦さないはず……。そうなったら、きっと自分自身を手にかけるでしょう。それだけは絶対にさせないし、させちゃいけない。丈瑠のためにも、ことはのためにも……」
そして、言葉に詰まった流ノ介に代わり、茉子がその先を口にしたのだった。
「ああ、絶対にお姫様に手なんかかけさせられねーよな」
「丈ちゃんやことはちゃんが悲しむのは見たかねぇしな」
千明と源太はお互いに、目を合わせ頷くと、丈瑠へと向き直り、それぞれの刀を手にした。
だが……
「お前達は手を出すな」
と、今にも丈瑠へと向かっていこうとした千明と源太を薫姫が止めたのだった。
「丹波、私の先祖が何をしたのか……何故、丈瑠の先祖が外道に堕ちなければならなかったのか、知る由もないが、目の前にいる静瑠という者が私に対し『復讐』と言うくらいだ、なにか良からぬことをし、当主の座に座ったのではないかと思っている。しかも、影武者という存在を生み出したのだ。いくらこの世を守るためとはいえ、たった一つしかない命を志葉存続のために軽んじられることなどあってはならなかったのだ。私は志葉の前当主として、先祖の過ちに対し謝罪しなければならない。私の命を差し出すことで、静瑠の中の『復讐』が昇華でき、丈瑠が戻ってくるのならば、惜しくない……そう思っている」
そう口にすると、流ノ介、茉子にもわかってくれ…と目で伝え、裏正を突きだす丈瑠の前へと歩み出ようとした時だった。
「そんなんや、ないんです。お姫様のご先祖様も殿さまのご先祖様も…何も悪くないんです。何も……ほんま、何も悪くないのに…………」
目に涙を溜め、ことははそう口にすると、丈瑠と薫姫の間に立った。
そして、その手には、シンケンマルではなく、一枝の桜を握っていたのだった。
☆次回、私の中での『影武者』の成り立ちをようやく書かせていただけるかと。・・・長かったですね。果たして上手く伝わるのだろうか・・・心配なところです☆
「『護』のモヂを解き、自らの居場所をわざわざ知らせてくれるとは……舐められたものだ」
右手に裏正を携え、鋭い視線を庭にいる侍達へと向けられた。
「殿、それは……」
重く息苦しく感じられ、誰もが口を開けずにいる中で、震えそうになる声を必死に抑えながら、流ノ介が丈瑠の言葉を否定しようとした時だった。
「それは違う。丈瑠…否、静瑠と言ったか……私は逃げるつもりも、闘うつもりもない。ただ…………謝りたいのだ」
そう、屋敷の奥から姿を現し、言葉を発したのは薫姫だった。
いつもなら、その言葉に噛みつくであろう丹波は、姫の横で正座をし、しっかりと丈瑠を見据えた。
「謝る…だと?……くだらない。欲しいのは言葉ではない。償いたいというのならば、その命で贖ってもらおう」
丈瑠は、苛ついた声を吐き出すと、手にしていた裏正の剣先を薫姫へと向けたのだった。
「……わかった」
薫姫は、一度も丈瑠から目を離さず、一呼吸置いた後、そう答えた。
「姫、それはなりません」
「そうですとも、そんなことは認められません。それに…もし、姫に手をかけたと殿が知れば…………」
薫姫の一言に、慌てて口を挟んだのは丹波と流ノ介だった。
「そうです。貴方にもしものことがあって、それが自分のした事だと、丈瑠が正気に戻って知ったら、絶対に自分を赦さないはず……。そうなったら、きっと自分自身を手にかけるでしょう。それだけは絶対にさせないし、させちゃいけない。丈瑠のためにも、ことはのためにも……」
そして、言葉に詰まった流ノ介に代わり、茉子がその先を口にしたのだった。
「ああ、絶対にお姫様に手なんかかけさせられねーよな」
「丈ちゃんやことはちゃんが悲しむのは見たかねぇしな」
千明と源太はお互いに、目を合わせ頷くと、丈瑠へと向き直り、それぞれの刀を手にした。
だが……
「お前達は手を出すな」
と、今にも丈瑠へと向かっていこうとした千明と源太を薫姫が止めたのだった。
「丹波、私の先祖が何をしたのか……何故、丈瑠の先祖が外道に堕ちなければならなかったのか、知る由もないが、目の前にいる静瑠という者が私に対し『復讐』と言うくらいだ、なにか良からぬことをし、当主の座に座ったのではないかと思っている。しかも、影武者という存在を生み出したのだ。いくらこの世を守るためとはいえ、たった一つしかない命を志葉存続のために軽んじられることなどあってはならなかったのだ。私は志葉の前当主として、先祖の過ちに対し謝罪しなければならない。私の命を差し出すことで、静瑠の中の『復讐』が昇華でき、丈瑠が戻ってくるのならば、惜しくない……そう思っている」
そう口にすると、流ノ介、茉子にもわかってくれ…と目で伝え、裏正を突きだす丈瑠の前へと歩み出ようとした時だった。
「そんなんや、ないんです。お姫様のご先祖様も殿さまのご先祖様も…何も悪くないんです。何も……ほんま、何も悪くないのに…………」
目に涙を溜め、ことははそう口にすると、丈瑠と薫姫の間に立った。
そして、その手には、シンケンマルではなく、一枝の桜を握っていたのだった。
☆次回、私の中での『影武者』の成り立ちをようやく書かせていただけるかと。・・・長かったですね。果たして上手く伝わるのだろうか・・・心配なところです☆
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