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年越し……  後編

☆さて……年越し完結です。男同士での年越しも、また良いものかと……☆











「遅くなりまして、申し訳ございません。危うく年を越してしまうところでした」


そう口にしながら現れたのは、流ノ介だった。


「ホントだよ…全く。お前に呼ばれなけりゃ、俺はもっと早く来れたのにさ~」


「まぁまぁ、いいじゃねぇか。こんな旨そうな年越し蕎麦を持ってきてくれたんだからよ」


文句を言う千明と、それを宥める源太の手には、エビ天が2本ずつ入った蕎麦が乗せられていた。




「よっ、丈瑠、久しぶり」


千明は、蕎麦を丈瑠の横に置くと、そこに自分も腰を下ろし、笑顔を見せた。


「お前達……何で?」


千明の笑顔を見て、ようやく丈瑠は固まった体が動き、口を開くことが出来た。


「はぁ?何でって、そりゃあ一緒に年越しをしようって思ったからじゃん」


「家族がいるだろう……」


「あのなぁ、今更…親父と年越しなんてしないっつーの」


千明はここで年を越すのを当たり前のように言った。


「そうですよ、殿。年越しは家族と…なんて決まりがあるわけではありません。私は殿と年を越したいと思って、前々から年越し蕎麦をお馴染みのお店に頼んでおいたのです」


流ノ介は置かれた蕎麦を手にし、笑顔と共に、それを丈瑠へと手渡した。
渡された蕎麦は温かく、手から伝わった温もりが体の奥深くまで行き渡ると、丈瑠もまた自然と顔が綻んだ。




「そういや源太、フランスでの商売に失敗したんだってな」


流ノ介が何気なく言った言葉に、丈瑠は思わず手にした蕎麦を落としそうになった。


「お前!?何で先にそれを言わなかった!!商売に失敗って……」


「ばっ、ばか、流ノ介!!おい、千明、流ノ介にしゃべりやがったな!?」


源太は流ノ介と千明を交互に見た後、気まずそうに丈瑠に目を向けた。


「いやぁ~……、最初は屋台ってのがウケてたんだがな……」


「味が普通だからなぁ、お前の寿司は」


「……言い返せねぇのが、悔しいけどな、まぁ…そういう事だ」


「お前……」


丈瑠は、一つ大きな溜め息を吐くと、「そういう事は早く言え」…と付け足した。
そして……


「金……ないんだろう?ここで暮らすといい。どうせ、そのつもりだったんだろう?」


静かにそう呟いた。


「……丈ちゃん」


源太は丈瑠からの言葉に目頭に熱いものが込み上げ、皆が見ている前でそれを拭った。


「良かったな、源ちゃん。どう丈瑠に切り出そうか悩んでたもんなぁ」


千明はそう言い、源太の肩を抱き、泣く真似をした。




「殿……こんな二人は放っておいて、蕎麦を頂きましょう。除夜の鐘の音も聞こえて参りましたし、年が明けてしまっては意味がありませんから」


流ノ介に言葉に、丈瑠は空を見上げた。
いつの間にか、流ノ介の言うとおり、鐘の音が響いていた。




……ことは、お前も今頃、京都で家族と共に鐘の音を聞いているのだろうな。


『年が明けたら、すぐに電話しますから、寝ないで待っていて下さいね』


それは、皆が来る前にことはから言われた言葉だった。
当たり前だ。お前の声を聞かずに寝れるわけがない。
そして……来年は共に、この鐘の音を聞こう。
家族として……。




優しい笑みを浮かべた丈瑠は、手にした蕎麦を口に運ぶと、美味しそうな音を立てた。
そんな姿を流ノ介は笑顔で眺め、自身も同じように蕎麦を口にしたのであった。
















☆……年、越す前で終わってしまいました…スミマセン。まぁ、無事4人で年を越したということでご了承下さい。そして、ことはちゃんからの電話で更に幸せいっぱいになった事でしょう。源ちゃんは年明けから、志葉邸に住むことになりました。また色々と妄想していきたいと思います☆


☆sin様、拍手、コメントありがとうございます。今年もこんな駄文しか書けない私ですが、よろしくお願いいたします☆





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年越し……  前編

☆今更ですが、年越しのお話を書かせて頂きます。テーマは仲間。ラブ要素はない……かな。スミマセン☆












「……そっか。それで爺ちゃんがいなかったって訳か~」


縁側にて月を眺めながら、源太は手にした盃を口に運んだ。


「ああ…。ドウコクとの戦いも終わり、ようやく……家族と暮らせるというのに、ここに残った…いや、残ってくれたんだ。正月くらいは家族と過ごして欲しくてな」


口元に笑みを浮かべ、丈瑠もまた盃の中身を一気に喉の奥へと流し込んだ。




彦馬は年越し、そして正月を志葉の屋敷で過ごすことは当たり前だと思っていただけに、丈瑠から「家族と共に過ごせ」と言われ、断固拒否をしていた。
それは黒子達も同じであった。



……が、お願いではなく、当主としての命令だ、と言われれば、了承せざるを得なく、渋々ながらも彦馬は昼に、黒子達は数人を残し、夕飯の片づけを終えてから、家族の元へと帰ったのであった。



「俺一人でいい…と言ったんだがな、さすがに黒子は交代で帰ると、きかなくてな……」


「しょうがねぇさ。だって、丈ちゃん一人残してお化けなんて出たら、誰が気絶した丈ちゃんを介抱するんだって話だろ?」


源太は、にっと口の端を上げると、意地悪っぽい目を丈瑠へと向けた。


「なっ!!……き、気絶なんかするかっ!!」


頬を膨らませ、ぷいっ…とそっぽを向く丈瑠の姿に、志葉の当主ではなく、小学校の頃の面影を源太は見た。
それが源太にはたまらなく嬉しかった。




「それより、お前はなんで日本にいるんだ?フランスで店…やってたんじゃなかったのか?」


「あ、ああ……まぁ、そうなんだけどよ、なんだ、その……なぁ」


源太は気まずそうに、頭をぽりぽりと掻き、口を噤んだ。


『……何かあったのか?』


源太のそんな姿に、丈瑠は怪訝な顔をし、そう問おうとした時だった。




「と~~~の~~~」


聞き覚えのある声が志葉の屋敷にこだました。


「馬鹿!!もうじき12時だってのに、お前、うるさ過ぎだろ!!」


そういうもう一つの声も、十分大きく、ここが普通のどこにでもあるような住宅街であったなら、迷惑この上なかっただろう。
……が、ここは志葉邸、大きな声を出したところで、迷惑になるような狭い敷地であるはずがなかった。


「お、来た来た!!」


源太は、気まずに雰囲気だったその場をさっと離れ、その声の元へと走って行った。


「あ、おい…源太!!」


丈瑠はそう口にしたものの、体は固まったまま動く事が出来なかった。




……今の声……あいつら、何で……?




嬉しい気持ちがあるものの、戸惑いもまた大きかった。
















☆ちょっと長くなりそうだったので、前後編で書かせていただきますね☆












プロフィール

南 ユキ

Author:南 ユキ
シンケン妄想小説置き場です


朴路美さん見たさにシンケンを見て、殿にハマった……大人です。
そして、妄想が膨らみ、殿×ことはの小説なんぞを書かせて頂いてます。

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