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……その後  4

☆甘い要素は全くなく、どちらかと言うと、ちょっとしんみり系な……赤×金となっています☆













「丈ちゃん!!こんなとこで何してんだ?寝てなくて大丈夫なのか!?」


庭から入ってきた源太は、縁側に足を投げ出し座っている丈瑠を見つけて、目を丸くした。


「ああ……胸焼けが、酷くてな……」


丈瑠は胸を擦りながら、苦笑いをした。
そんな丈瑠を不思議そうに見ながら、源太は隣に座った。


「まぁ、良くわかんねぇけど、とにかく良かったよ」


にかっ…と笑うと、手にしていたペットボトル二本のうちの一本を渡した。


「酒……は傷が治ってからってことで、とりあえず、お茶で乾杯といこうや!!」


「ああ、そうだな」


丈瑠はペットボトルを受け取り、キャップを取ると、源太のボトルに軽く打ちつけてから、流し込むようにお茶を飲んだ。
口の端から零れ落ちる滴は、丈瑠のシャープな顎を伝い、さらに上下する喉仏を伝った……。
けれど、丈瑠はそれを拭うことなく、目を瞑り飲み干した。
体の隅々にまで、冷たさが行き渡ると、ようやく丈瑠は目を開き大きく息を吐くと、ゆっくりと源太を見た。


「なあ、源太……。傷が良くなったら、この屋敷を出たいと思ってる」


そう口にした丈瑠の顔に月明かりが射し、どんな表情をしているのか、源太にはわからなかった。


「……それってどういう……?」


戸惑いの表情を浮かべ、源太は丈瑠を見た。


「みんなの前からいなくなる…とかじゃないから心配するな。できれば、お前の所に置いてもらえないかと思って……」


丈瑠の声は穏やかだった。


「この屋敷に姫が戻られた今、俺がここに居るのはおかしいだろう?」


「そうかもしれねぇけど……でもよ……」


源太はそこまで口にすると、口を噤んだ。




……いや、確かにこのまま、ここに居ても丈ちゃんが辛い思いをするかもしれねぇ。
お姫さんはいい人かもしれねぇけど、丹波って爺さんは最低最悪だもんなぁ。
くどくど嫌みを言われながら、この屋敷に居るくらいなら、俺んトコに居た方が、丈ちゃんも気が休まるかもな。




「わかった、丈ちゃん!!治ったら、俺んトコに来たらいいさ。だいたい最初に誘ったのは俺の方だしな」


源太は親指を立てて、丈瑠に笑顔を向けて、そう言葉を口にした。






『丈ちゃん……俺のところに来ねぇか?記憶ないとか関係ねぇ!!俺が丈ちゃんを知ってる!!それだけで十分だ』




この言葉に嘘はない。
丈瑠にはわかっている。
損得関係なしに、自分を無条件に受け入れてくれる。
『志葉』にも『侍』にも捕われることのない……でも、自分の信念を貫く、ただ一人の幼馴染。
だからこそ、自分の情けない姿も晒け出せる。


「その時が来たら……頼む」






……本当にその時が来たとしたら、みんなは反対するだろう。
実際、周りにばかり気を使う丈ちゃんが、この屋敷を出るなんてことが出来るとも思えない。


でも、『志葉家の当主の影』としてではなく、ただの『志葉丈瑠』という幼馴染が俺を求めてくれた。
今は、その気持ちに答えたい……ただそれだけだ。




今は、ただそれだけでいい……。








源太は、目頭に込み上げるものを感じると、丈瑠から視線を外し、手にしたボトルの中のお茶を一気に流し込んだのだった。












☆……殿の胸焼けの原因は?……おわかりですよね。さて、今回の話にて『……その後』(番外編)は終わりとなります。といっても、これに繋がって、最後の戦いへと進むわけで、姫との絡みなんかはそちらで書いていけたらと思っています。本編最後で流さん、番外編でことはちゃん、茉子ちゃん、千明、源ちゃんとの絆を描いたつもりです。次回からは、ちょこちょこ短編を書いてみようと思っています。そして、来年…落ち着いた頃に、また長編を書いていきたいと思っています☆


☆sin様、いつもコメントありがとうございます。二人の料理の行方……いかがだったでしょうか?寒くなりましたので、sin様も風邪には気をつけてくださいね。臨月に入った私は年末年始に出産(高いので)…とならないように、今から祈っている次第でございます☆







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……その後  3

☆緑→黄……のお話になっています。それでもよろしければ、ご覧ください。でも、黄は出てきません。赤&緑のお話です☆















「……もう、あんな場面を見るのは勘弁だから」


千明は、まだ傷の癒えない丈瑠に向かってそう呟いた。


「そうだな……悪かった」


千明の言う『あんな場面』を思い浮かべながら、丈瑠は素直に詫びを口にした。
まさか謝ってもらえるなんて思わなかった千明は、目を見開き丈瑠を凝視した。


「何だ?」


そんな千明の視線が気に入らなかったのか、丈瑠の眉間に皺が寄った。


「いや、素直だなぁって思って。丈瑠らしくないってかさ~」


そう言う千明の顔は嬉しそうだった。






「それより、横になってなくて大丈夫なのか?」


布団の上で相変わらず姿勢良く座る丈瑠を千明は心配した。


「ああ。……動かなければ、痛くはない」


「そっか」


そう呟くと千明は、丈瑠から視線を外した。
途端に部屋の中は静かになる。




「何か言いたいことがあるんじゃないのか?」


何か言いたそうな千明の姿を見て、丈瑠が先に口を開いた。


「……あのさ、あいつ…のこと、だけどさ……」


はっきりとは言わずに、視線を泳がせる千明の姿に丈瑠は苦笑した。


「ことはのことか?」


丈瑠は、千明がことはのことを気にしていたのは、ずっと知っていた。
自分の気持ちがことはにある…なんて気付いていなかった時から、ことはの傍にはいつも千明がいた。
文句を言いながらも、ことはを一番近くで見ていたのは、自分ではなく千明だということに、いつの頃からか胸が締め付けられるようなっていた。


「……あいつさ、ホント酷い有様で……見ていられなかったんだ……」


千明の脳裏に泣き叫ぶ姿が思い出された。


「頼むから、もう……あんな思いをさせんなよ。あいつから、笑顔を奪うなよな……」


自分は丈瑠を止めることを出来なかった。
そのために、ことはが泣き叫ぶことになった。
いつも見ていたい笑顔を……一生奪われることになったかもしれなかった。


「ああ。二度とあんな真似はしない。もう……決して泣かせない」


丈瑠の迷いのない目に千明は頼もしくも思い、そして…悔しくも思った。
志葉家当主として振る舞っていた、影である……丈瑠はもういない。
ここにいるのは、自身の気持ちを素直に受け入れた一人の男。
しかも、男の目から見ても、格好良く、見とれてしまう程の男だ。




……俺が勝てる訳、ねーよなぁ……。




千明はそんな丈瑠に心の中で素直に負けを認めた。


「絶対だかんな!!」


「俺で……いいのか?」


いいもなにも、ことはの気持ちは丈瑠にしかないのを千明は知っている。
ならば、そんなことはを応援したい。
ことはが……好きだから。
そして、それ以上に丈瑠のことも尊敬してるし、好きなのだ。


「あぁ。お前だから……、いや、お前じゃなきゃ認めねぇし」


そう言うと、目を細め、片方の口の端を上げると……ポケットからショドウフォンを取りだして、丈瑠の目の前に画面を差し出した。




――――!!!!




「それに、こんなの見せられたら、諦めるしかないっしょ」


千明はいつもの明るい調子を取り戻し、意地の悪い笑顔を見せた。


「いつ撮ったんだ!!消せ、千明!!」


「あんまり動くと、傷が開くってーの。大人しく寝てろよ。それに、今更消すも何も、みんなに送っちゃったしね~」


千明はショドウフォンを取られないように頭の上にかかげ、楽しそうにそう告げた。









そこに写っていたのは、寄り添いながら眠る丈瑠とことはの姿。
幸せそうに、笑みを見せる丈瑠……。
そんな丈瑠の腕を大切そうに握ることは……。







これからの戦いが今まで以上に厳しく、激しいものだと……千明にもわかっている。
だからこそ、今はそんなことなど考えずに、笑顔でいたい。
みんなと……。




そして、丈瑠と共に。


















☆……終わりが、上手く描けていないような…、でも、今の私にはこれが精一杯です。次回は殿と源ちゃんのお話の予定です☆













……その後  2

☆特に甘い要素はありません。赤×黄×桃でお楽しみ下さい☆














「……茉、茉子、これは…もしかして、お粥……なのか?」


丈瑠は目の前に出された膳から視線を外すことが出来なかった。


「うわぁ、茉子ちゃん、美味しそう!!」


その横でことはは、お粥…らしき物を覗き込みながら、羨ましそうな声をあげた。





……本気で、そう思っているのか?




丈瑠は視線だけをことはに向けて、心の中でそう呟いた。


「お粥以外の何に見えるってのよ!?まだ起き上がれない丈瑠のために、栄養のつくものをって思って、色々入れてあげたんじゃない!!」


茉子は少し頬を膨らまし、拗ねた風にそう言った。




……殿さまの体のことも考えて、茉子ちゃん、さすがやなぁ。




ことはは、茉子の気遣いにショックを受けた。
自分は気遣うどころか、一緒になって寝てしまった。
しかも、腕を抱きかかえて……。


「ことは?……どうかしたのか?」


さっきまでお粥を見て目をキラキラさせていたことはの顔が曇ったのを、丈瑠は見逃さなかった。


「へ?」


視線を上げると、丈瑠と茉子がことはをじっと見つめていた。


「あ、あの……、そうや…うち、ちょっと用が……」


慌てて笑顔を見せると、ことはは部屋から出て行った。








「丈瑠、何かしたの?」


「――!!何かって、何だ!?」




……何かをするも何も、お前が得体の知れない物を持ってくるまでは、いい雰囲気だったのに。




丈瑠は恨めしそうに、茉子を見て溜め息を吐いた。


「ふーん……、何かあったわけだ。とにかく、これ以上あの子を泣かさないでよね。もし泣かすようなことがあったら、私が許さないからね」


茉子は冷たい視線を丈瑠に送ると、「じゃあ、きちんとそれ、食べてよね」…と付け加えて、部屋を出ていった。




……もしかして、これってことはを泣かせた嫌がらせなのか!?
わざと食べられないように作った……いや、そんなことは…ないよな?




……それにしても、ことはは、どうしたんだろう?
もしかして、これが食べたかったのか?
俺の分しかなくて、気を遣って出て行ったとか?
…いや、まさか…違うよな。




丈瑠は、意味のわからないことを自答しながら、目の前に置かれたお粥…らしきものをどうするべきなのか頭を痛めたのだった。







その頃、ことはは……というと、台所にいた。


「うちも、茉子ちゃんを見習わなっ!!栄養満点のお粥には、お姉ちゃん特製のミックスジュースが一番や!!」


そう言いながら、ことはがミキサーに色々と入れているのを、黒子達はハラハラしながら見つめることしか出来ないのであった。




















☆momoko様、コメントありがとうございました。後ほど、コメントのお返事をしに伺わせて頂こうと思います。sin
様、短編へのコメントもありがとうございます。いつも読んで頂き、ありがとうございます☆






……その後  1

☆さっそく番外編に突入いたします。自分の中できちんと完結(番外編も含め)したいのと、描きたいものが溢れ出てくるもので。……ってことで、今回は殿さまとことはちゃんの番外編となります。甘い感じになっておりますので、赤×黄が苦手な方はご遠慮ください☆














……温かい。
あれ?うち……何を持ってるんやろ?




『……とは……ことは……』




……誰かがうちのこと呼んでる。
まだ、この温もりを離したくないんやけどなぁ……。




「ことは!!」



――――!!



「と、殿さま!?」


ことはは慌てて起き上がると、自身の手にしているものを見て、思考が止まった。


「……そろそろ手を離していいか?体を動かせなくて困るのだが」


そう言う丈瑠の表情は、決して困った風ではなく、微笑んでいるようだった。


「きゃーーー!!す、す、す、すみませんでした。う、うち、何で殿さまの手、握って寝てたんやったっけ?」


くりくりの目をさらに大きくし、ことはは顔を真っ赤にして慌てて手を離した。


「ふっ……またお前に救われたな」


「……え?」


「ありがとう、ことは」


丈瑠は起き上がると、顔を赤くしたまま恐縮していることはをそっと抱きしめた。








「殿さま……、うち、みんなに言ってませんから。あの時の言葉は殿さまからみんなに伝えた方がええと思います…絶対」




『お前達と一緒に戦えて良かった。お前達で……良かった』




「今更……」


「今更やないです!!今やから……これからドウコクと戦わなあかん今やから必要な言葉やと思います」


胸元から聞こえる必死なことはの声がとても愛おしく、丈瑠は抱きしめている腕に力を入れた。


「そうだな、今更……じゃないよな。……ことは、お前に向けたあの言葉、あれも…なかったことにするつもりはない。本心だ」





『お前を好きになれて……幸せだった……』




ことははその言葉を思い出すと、丈瑠の胸元でさらに顔を赤くしてうろたえた。


「あ、あの…えっと、それは、あの、うち…その…」


ことはの気持ちも同じであったが、それを今、丈瑠に告げていいものなのか、ことはは戸惑っていた。


「今は…答えなくていい。全てが終わったら、聞かせてくれ……お前の気持ちを」


丈瑠の胸に抱かれていることはには、丈瑠の顔は見えない。
でも、心臓の鼓動がさっきより早くなったのを感じていた。
それは、自分の心臓の鼓動かもしれない……けれど、ことはの中でどこか確信があった。




……きっと殿さま、照れてはる。




そう思うと、心がくすぐったくなった。



『全てが終わったら』


ことはは嬉しかった。
自分を痛めつける殿さまはもういない。
全てが終わっても、自分の元にこの人はいてくれる…ということ。


「うち……全てが終わっても、言えへんかもしれませんよ」


これはちょっとした意地悪。
うちらを泣かせた……罰。


「構わない。何があっても俺の気持ちは変わらない。今までも…これからも……」




……俺がこの世に留まったのは、お前への気持ちだけだ。
全てが終わったら、俺は…気持ちのままに、お前を求めるだろう。




こんな俺を留めたのはお前なのだから……覚悟してろよ。




にやり…と口の端を上げて笑う丈瑠のことなど知らず、ことはは幸せな思いを抱いて、丈瑠の胸に抱かれているのであった。












☆……いかがだったでしょうか?甘い感じに仕上がっているでしょうか?短編って難しいですねぇ。上手く二人の想いを伝えられていたらいいなって思います☆















闇を彷徨う心  最終話

☆sinさん、ころちゃんさん、いつも拍手コメントありがとうございます。こんなに長くなってしまった作品を読んで頂き、感想まで……本当に嬉しいです。最後にあらためて御挨拶しておりますので、お読み頂けたら幸いです☆














「丈瑠~、こと……」


丈瑠の部屋の障子を開け、名前を呼びながら中を覗いた千明は、慌てて口を噤んだ。


「どうしたの?」


横から茉子が覗き込むと、中で手を繋ぎ寄り添いながら眠る丈瑠とことはがいた。


「うわぁ…、丈瑠の寝顔……初めてみた」


「俺も……」


二人の顔は穏やかで、全く目を覚ます気配がなかった。


「あんな事があったってのに、幸せそうに眠っちゃって……。起きたら、少しきつく言わないと駄目ね。ことはをあんなに泣かせたんだから」


そう言いつつも、茉子の表情は優しかった。


「ま、その前にお粥でも作ってあげるか!!」


「え!?姐さん、それって……」


千明がものすごい勢いで茉子の顔を見た。


「アメとムチよ!!きつく言うまえに、アメを与えてからね」


そう言うと、茉子はスキップするように廊下を走って行った。




……それじゃ、ムチとムチだろ。


そう突っ込みたかったが、茉子の怒りの矛先が自分に向くのも面倒なので、千明は黙って茉子を見送った。




……確かにことはを泣かせ、俺たちにも心配掛けさせたんだから、それくらいの罰は受けても…当然か。


そうは思いつつも、千明は眠る丈瑠に同情の目を向け、思わず手を合わせて……


「ご愁傷様……」


…と、呟き障子を閉めた。






「さて…と、源ちゃんに報告しに行ってくるか」


千明は伸びをして丈瑠の部屋を後にしようとした……が、ふと足を止めた。


「そ~だ!!いいこと思いついた」


軽く顎を上げ、ふふん…と鼻を鳴らすと、千明は再び丈瑠の部屋へと戻って行った。










丈瑠は……千明の思惑なんて知らない。


流ノ介が姫に、丈瑠の無事を笑顔で報告していることも……。


茉子が眉間に皺を寄せ、シンケンマルでお粥を作っていることも……。


源太がいつでも快気祝い寿司を作れるように、未だ心配しながら寿司ネタを仕込んでいることも……。


そして……空に向かい丈瑠の成長を報告している彦馬のことも……。






ただ、今は志葉の当主としてでも、影としてでもなく、ただの一人の男として……心から大切に思う人の手に護られ、夢の中でその幸せと安らぎを噛みしめているのだった。










『落ちずに飛び続けろ……これからも、ずっと。お前は……決して一人ではない。……己を信じろ…丈瑠……』









人知れず、ことはの部屋より飛び出した紙飛行機は、その姿を真っ青な空へと消したのであった。







                                      










☆終わった~~~!!お読み頂いていた皆様には、本当に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。momoko様、れっどすねーく様、sin様、ころちゃん様・・・そして他にもお読み頂いていた方、本当に、本当にうれしく思います。皆様のおかげで最後まで書き上げることが出来たと思います。次回、あらためましてお礼(ブログ)を書かせて頂きたいと思います。南 ユキのことももう少しお話できればと思います☆


p,s こちらのお話の番外編(その後)も書いていく予定です。またお越し頂けると嬉しいです。











プロフィール

南 ユキ

Author:南 ユキ
シンケン妄想小説置き場です


朴路美さん見たさにシンケンを見て、殿にハマった……大人です。
そして、妄想が膨らみ、殿×ことはの小説なんぞを書かせて頂いてます。

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