追憶の桜 最終話
☆お読み頂いている皆様、長い・・・長いお話にお付き合い下さり、ありがとうございました。どうにか今回の話で終えることが出来ました。相変わらずの尻切れ?・・・っぽくなってしまっているのは、目を瞑って頂きたいと思います。では、そこらへんを頭の片隅に置かれまして、最終話お読み頂けるとありがたいです。そして、もちろんガッツリ赤×黄ですのでお気をつけ下さい☆
「静瑠さんも……消えてしまったんですか?」
ことはは、少し落ち着いた頃に丈瑠にそう聞いた。
「『静瑠』は、二人とは違う。消えるも何も、元から俺の中にいた……というか、俺自身だ。前世…過去として俺の中に残っている。俺自身の記憶としてな」
「うちと出逢った時のこともですか?」
「鮮明…とは言わないが、覚えている。出逢って……お前に惹かれ、そして、『静瑠』はその思いを胸に、桜の中でこの世を去った。……そして、俺がいる。志葉丈瑠としての俺がこの世に生まれ、お前に出逢い恋をした。『静瑠』がお前に恋をしたんじゃない。ことは…お前を想っているのは、俺自身だ。俺以外の誰でもない」
丈瑠の最期の方の言葉は、どこか怒っている様に感じたことはは、眉をハの字にし、上目遣いに丈瑠を見つめた。
それに対し、丈瑠は一つ大きく息を吐くと、拗ねたように言葉を口にした。
「もう静瑠の名は口にするな。お前の口から他の男の名なんて聞きたくない」
「で、でも…殿さま……」
「わかったな?」
これ以上の問答は無用だ…とでも言うように、丈瑠はことはを一睨みした。
もうこうなっては、どんな言い訳をしようとも、丈瑠は聞く耳を持ってくれないことは、ことはにもわかっていた。
……暴君や。
ことはは心の中でそう呟きながらも、自分の前世に嫉妬してる丈瑠を心から愛しいと思った。
「殿さま、うち思うんです。きっとまたいつか、二人は巡り会えるって。……絶対に。やって、助けてくれたやないですか。人の世のために、うちらのために……。そんな二人を神様や仏様はきっと見てて赦して下さるんやないかなぁって」
散ってしまった庭の桜の木を見つめながらことはは、いつもの明るさを見せた。
……お前は、強いな。
お前がそう言えば、本当にそうなると…思える。
「そうだな。…そうなるといいな」
「はい」
力強く返事することはを、丈瑠は思い切り抱き締めた。
「と、殿さま…苦しい…です」
「色々とあったが、式の延期はなしだ。早く…お前が欲しい」
……もうこれ以上…待ちたくない。
待てない。
「うちも……うちも、殿さまが欲しいです」
丈瑠は、ことはのその言葉に、思わず抱いていた彼女を自身から引き離し、まじまじと見つめた。
「お前……言っている意味、わかってるのか?」
「?…早く結婚したいってことですよね?奥さんが欲しいってことやないんですか?」
顔を紅くさせている丈瑠を不思議に思い、ことはは瞳をぱちぱちとさせた。
……まぁ、妻になって、いつも隣にいて欲しいのは当たり前なのだが……。
「あんまり、煽るな。抑えがきかなくなるだろうが……」
困ったような笑みを丈瑠は浮かべると、再びことはを自身の腕の中に包みこんだ。
ことはは、未だ意味がわからなかったが、丈瑠の胸の温もりに、何も考えず身を預けた。
……お前はそれでいい。
そんなお前を俺は…愛してる。
もう決して、何者にも惑わされない。
強くなりたい……。
しかし丈瑠は、ことは…と言う幸せに浸りながらも、頭の中に響いた…低く不気味な声が頭から離れることがなかった。
裏正を操っていたのは、いったい……?
影武者の存在を知り、真実とはかけ離れた嘘を先祖に伝えた…その者は、三途の川にいるのだろうか?
だが、それでも…俺はもう二度と自分を見失うことはしない。
この世を護るため。
そして……ことはを護るために。
口には出さず、心の中で、丈瑠は桜へと誓った。
すると……まるで、その言葉に返事をしたかのように、花の散ってしまった桜の枝がさわさわ…と揺れた。
それは、ただの風の仕業だったのか……それとも、散ってしまったはずの彼女の魂の残像だったのか。
それは誰にもわからない。
しかし丈瑠は、それが自身の祖先を想い、桜へと身を変えた…彼女からの返事なのだと思わずにはいられなかった。
終わり
☆・・・どうでしたか?裏正・・・まだまだ、簡単には眠りにつかせてあげられない南です。それにしても、今回の話は、入院中(産後)に考えていた話でして、あれからもうすぐ1年となってしまうんですよね。本当に・・・更新が遅くて申し訳なく思っております。それでも、そんな亀更新をお待ち頂き&お読み頂き、ありがとうございました。次回、あらためまして、コメントのお返事を書かせていただきたいと思います。そして、短編を書きながら、カテゴリの分類作業を進めていきたいと思います☆
「静瑠さんも……消えてしまったんですか?」
ことはは、少し落ち着いた頃に丈瑠にそう聞いた。
「『静瑠』は、二人とは違う。消えるも何も、元から俺の中にいた……というか、俺自身だ。前世…過去として俺の中に残っている。俺自身の記憶としてな」
「うちと出逢った時のこともですか?」
「鮮明…とは言わないが、覚えている。出逢って……お前に惹かれ、そして、『静瑠』はその思いを胸に、桜の中でこの世を去った。……そして、俺がいる。志葉丈瑠としての俺がこの世に生まれ、お前に出逢い恋をした。『静瑠』がお前に恋をしたんじゃない。ことは…お前を想っているのは、俺自身だ。俺以外の誰でもない」
丈瑠の最期の方の言葉は、どこか怒っている様に感じたことはは、眉をハの字にし、上目遣いに丈瑠を見つめた。
それに対し、丈瑠は一つ大きく息を吐くと、拗ねたように言葉を口にした。
「もう静瑠の名は口にするな。お前の口から他の男の名なんて聞きたくない」
「で、でも…殿さま……」
「わかったな?」
これ以上の問答は無用だ…とでも言うように、丈瑠はことはを一睨みした。
もうこうなっては、どんな言い訳をしようとも、丈瑠は聞く耳を持ってくれないことは、ことはにもわかっていた。
……暴君や。
ことはは心の中でそう呟きながらも、自分の前世に嫉妬してる丈瑠を心から愛しいと思った。
「殿さま、うち思うんです。きっとまたいつか、二人は巡り会えるって。……絶対に。やって、助けてくれたやないですか。人の世のために、うちらのために……。そんな二人を神様や仏様はきっと見てて赦して下さるんやないかなぁって」
散ってしまった庭の桜の木を見つめながらことはは、いつもの明るさを見せた。
……お前は、強いな。
お前がそう言えば、本当にそうなると…思える。
「そうだな。…そうなるといいな」
「はい」
力強く返事することはを、丈瑠は思い切り抱き締めた。
「と、殿さま…苦しい…です」
「色々とあったが、式の延期はなしだ。早く…お前が欲しい」
……もうこれ以上…待ちたくない。
待てない。
「うちも……うちも、殿さまが欲しいです」
丈瑠は、ことはのその言葉に、思わず抱いていた彼女を自身から引き離し、まじまじと見つめた。
「お前……言っている意味、わかってるのか?」
「?…早く結婚したいってことですよね?奥さんが欲しいってことやないんですか?」
顔を紅くさせている丈瑠を不思議に思い、ことはは瞳をぱちぱちとさせた。
……まぁ、妻になって、いつも隣にいて欲しいのは当たり前なのだが……。
「あんまり、煽るな。抑えがきかなくなるだろうが……」
困ったような笑みを丈瑠は浮かべると、再びことはを自身の腕の中に包みこんだ。
ことはは、未だ意味がわからなかったが、丈瑠の胸の温もりに、何も考えず身を預けた。
……お前はそれでいい。
そんなお前を俺は…愛してる。
もう決して、何者にも惑わされない。
強くなりたい……。
しかし丈瑠は、ことは…と言う幸せに浸りながらも、頭の中に響いた…低く不気味な声が頭から離れることがなかった。
裏正を操っていたのは、いったい……?
影武者の存在を知り、真実とはかけ離れた嘘を先祖に伝えた…その者は、三途の川にいるのだろうか?
だが、それでも…俺はもう二度と自分を見失うことはしない。
この世を護るため。
そして……ことはを護るために。
口には出さず、心の中で、丈瑠は桜へと誓った。
すると……まるで、その言葉に返事をしたかのように、花の散ってしまった桜の枝がさわさわ…と揺れた。
それは、ただの風の仕業だったのか……それとも、散ってしまったはずの彼女の魂の残像だったのか。
それは誰にもわからない。
しかし丈瑠は、それが自身の祖先を想い、桜へと身を変えた…彼女からの返事なのだと思わずにはいられなかった。
終わり
☆・・・どうでしたか?裏正・・・まだまだ、簡単には眠りにつかせてあげられない南です。それにしても、今回の話は、入院中(産後)に考えていた話でして、あれからもうすぐ1年となってしまうんですよね。本当に・・・更新が遅くて申し訳なく思っております。それでも、そんな亀更新をお待ち頂き&お読み頂き、ありがとうございました。次回、あらためまして、コメントのお返事を書かせていただきたいと思います。そして、短編を書きながら、カテゴリの分類作業を進めていきたいと思います☆
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